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Corlettさんのセミナーに参加した [研究]

朝から電車で犬山の霊長類研究所へ移動。移動中は在野研究ビギナーズを読んで過ごす。生物系だけではなく、さまざまな分野における在野研究の話題が提供されている。米原、名古屋と乗り換えたけど、この時間帯だと朝に移動する会社員風の人が多いのですね。名鉄の時刻表が少し遅れていたけど、たまたま予定よりも早い電車に乗ることができたので10時過ぎには霊長類研究所に到着。しばらくして主催者の半谷さんがCorlettさんを案内していたので、一緒についてまわる。Ecological Researchに掲載予定のヤマビル論文(Host selection of haematophagous leeches (Haemadipsa japonica): implications for iDNA studies)のヤマビルたちも見学。あと現在、共同研究で進めているサンプル処理をしているところも見せてもらった。なるほど、これは大変だ。

11時からCorlettさんのComparing East Asian Tropical and Temperate Forestsというセミナーを聞く。月曜日のシンポジウムでは、これまでの知見について紹介したそうだけど、今日はまだわからないことについての話。最近、The Ecology of Tropical East Asiaの3版がでたことをまったくフォローできていなかった。Corlettさんが熱帯の植物に興味を持った理由とか全然知らなかったのだけど、ドリアンセオリーで有名なCornerさんの最終講義で植物やるなら熱帯だという話に影響されて、熱帯の植物を研究できるオーストラリアの大学を選んだらしい。それで大学院での仕事がニューギニアの植生なのか。アジアの森林が熱帯から温帯まで途切れなくつながっているという話を最初に聞いたのはDIWPAのセミナーだったかな。相変わらずの圧倒的な知識に基づいた話題提供だった。The Ecology of Tropical East Asiaはさっそく注文しておく。だれか熱帯生態学会ニューズレターに書評を書かないかなあ。

昼食をはさんで、午後は半谷さんの研究室のメンバーを中心としたセミナー。最初は半谷さんが屋久島とボルネオで行ってきた研究の紹介で、季節性に霊長類がどう対応しているのかという話。屋久島内でも標高帯によってニホンザルが利用可能な資源のカテゴリーはかなり異なり、食性も変化する。熱帯には冬がないので、利用可能な資源は比較的安定しているように思われるが、ボルネオ低地林のように一斉開花にともなう果実資源量の年変動が大きい地域がある。霊長類のように寿命が長い生物では、この資源変動に対応するには、食性をスイッチするやり方と餌があるところに移動するやり方が考えられる。行動範囲を広げるやり方としては、熱帯でも比較的、安定した果実資源が見られる河畔林などを利用するやり方と不定期だけど巨大な資源となる半着生イチジクの結実木を探しに行けるかとかなんだろう。カオヤイの結実パターンは群集レベルでは温帯に近いけど温帯の冬ほどの資源制約にはならない年が多いので、結果的に果実資源量は温帯や熱帯と比べても多いのではないかと思うのだけど…。フェノロジー論文どうにかしたいなあ。

次は私がアグライアの種子散布の話を紹介。アグライアの話よりも現在、日本で取り組もうとしている付着散布の研究のほうがインパクトあったようす。まあ、ベストショットがたくさんあるわけではないけど、自動撮影カメラを利用した種子散布研究は国内でも続けていく予定。

最後は中島さんがカメラトラップを使って哺乳類の密度をどうやって推定するのかという話とその過程で見つけた面白そうな現象の紹介。毎年15名もの卒論生を対応するのは大変そうだけど、千葉県内だけで300台ほどの自動撮影カメラを設置していて、そのデータの解析とかでかなり人力が必要な様子。先日の哺乳類学会の自由集会でプレゼンした内容がベースになっているとは思うけど、単にスライドを眺めるよりは、本人がじっくりとプレゼンしたものを聞くとやはりわかりやすい。哺乳類散布の果実がどのくらい自然落果するもんなのだろうか。

その後はネパールカレーのお店で夕食を食べて、関空に向かうCorlettさんと京都に向かう佐藤さんと一緒に名古屋まで移動して解散。久しぶりに英語で研究漬けの時間を楽しみました。
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