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カントウマムシグサの種子散布の論文 [研究]

今朝、めでたく受理通知が届いたカントウマムシグサの種子散布に関する論文。

大石里歩子, 前田大成, & 北村俊平 (2020) 日本の温帯林におけるサトイモ科カントウマムシグサの種子散布者としての鳥類の有効性:果実の持ち去り量と発芽への影響. Bird Research 16:XX-XX.

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2012年に石川県立大学に来てから、自動撮影カメラを利用して林床の果実持ち去りを定量化する研究を続けています。サトイモ科テンナンショウ属については、すでに関東地方や西日本の先行研究から、主な果実消費者は鳥類であることは明らかにされています(Suzuki & Maeda 2014a, b, 小林ほか 2017)。

Suzuki T & Maeda N (2014a) Frugivores foraging on a Japanese species of the Jack-in-the-Pulpit, Arisaema angustatum (Araceae), with reference to the general framework of the links between Arisaema and its major frugivore groups in Japan. Biogeography 16: 79-85.

Suzuki T & Maeda N (2014b) Frugivores of poisonous herbaceous plants Arisaema spp. (Araceae) in the southern Kanto district, central Japan. Journal of the Yamashina Institute for Ornithology 45: 77-91.

小林禧樹, 北村俊平, & 邑田仁. (2017) 日本産テンナンショウ属(サトイモ科)の果実熟期の分化と鳥類による種子散布. 植物研究雑誌 92:199-213.

私たちの研究では、石川県内のカントウマムシグサArisaema serratumの果実消費者とその持ち去り量を2か所の調査地で3年間にわたり調査し、種子散布者としての量的な有効性を解明しました。さらに量的に有効な種子散布者が散布した種子の発芽実験から、質的な有効性の一部についても検討しました。

カントウマムシグサの果実を利用する動物を調べるため、2013年秋から2016年春にかけて計60個体のカントウマムシグサ(2013年:11個体,2014年:20個体,2015年:29個体)の果実持ち去り動物を記録し、動物種毎の果実持ち去り数を計数しました。果実の持ち去り数の上位3種は、ヒヨドリ(31%)、シロハラ(26%)、トラツグミ(5%)でした。さらにヒヨドリやシロハラが散布した種子の発芽率とコントロールには有意差は見られず、両種ともに発芽能力がある種子を散布していることを明らかにしています。

果実の持ち去り量のデータは2016年までに解析済みでしたが(ファーストの学生)、発芽実験用のヒヨドリとシロハラが散布した種子の回収にさらに3年間を費やしました(セカンドの学生の調査の一部)。過去の卒論の図表を3月中旬から毎晩、少しずつ手直しして、年度末の2020年3月31日に投稿、4月7日(!)にコメントが戻ってきて、4月8日に受理されました。コロナで大変な時期に素早く対応していただきありがとうございました。

先行研究や私たちの結果をふまえると日本国内のかなり広い範囲で、秋に結実するテンナンショウ属の果実を主に消費しているのはヒヨドリとシロハラではないかと考えられます。ちょっと面白いのは、10月から11月の渡り途中に果実を食べるコマドリやマミジロですが、詳細は論文を読んでください。

これで続きの論文が書きやすくなったはず。
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Corlettさんのセミナーに参加した [研究]

朝から電車で犬山の霊長類研究所へ移動。移動中は在野研究ビギナーズを読んで過ごす。生物系だけではなく、さまざまな分野における在野研究の話題が提供されている。米原、名古屋と乗り換えたけど、この時間帯だと朝に移動する会社員風の人が多いのですね。名鉄の時刻表が少し遅れていたけど、たまたま予定よりも早い電車に乗ることができたので10時過ぎには霊長類研究所に到着。しばらくして主催者の半谷さんがCorlettさんを案内していたので、一緒についてまわる。Ecological Researchに掲載予定のヤマビル論文(Host selection of haematophagous leeches (Haemadipsa japonica): implications for iDNA studies)のヤマビルたちも見学。あと現在、共同研究で進めているサンプル処理をしているところも見せてもらった。なるほど、これは大変だ。

11時からCorlettさんのComparing East Asian Tropical and Temperate Forestsというセミナーを聞く。月曜日のシンポジウムでは、これまでの知見について紹介したそうだけど、今日はまだわからないことについての話。最近、The Ecology of Tropical East Asiaの3版がでたことをまったくフォローできていなかった。Corlettさんが熱帯の植物に興味を持った理由とか全然知らなかったのだけど、ドリアンセオリーで有名なCornerさんの最終講義で植物やるなら熱帯だという話に影響されて、熱帯の植物を研究できるオーストラリアの大学を選んだらしい。それで大学院での仕事がニューギニアの植生なのか。アジアの森林が熱帯から温帯まで途切れなくつながっているという話を最初に聞いたのはDIWPAのセミナーだったかな。相変わらずの圧倒的な知識に基づいた話題提供だった。The Ecology of Tropical East Asiaはさっそく注文しておく。だれか熱帯生態学会ニューズレターに書評を書かないかなあ。

昼食をはさんで、午後は半谷さんの研究室のメンバーを中心としたセミナー。最初は半谷さんが屋久島とボルネオで行ってきた研究の紹介で、季節性に霊長類がどう対応しているのかという話。屋久島内でも標高帯によってニホンザルが利用可能な資源のカテゴリーはかなり異なり、食性も変化する。熱帯には冬がないので、利用可能な資源は比較的安定しているように思われるが、ボルネオ低地林のように一斉開花にともなう果実資源量の年変動が大きい地域がある。霊長類のように寿命が長い生物では、この資源変動に対応するには、食性をスイッチするやり方と餌があるところに移動するやり方が考えられる。行動範囲を広げるやり方としては、熱帯でも比較的、安定した果実資源が見られる河畔林などを利用するやり方と不定期だけど巨大な資源となる半着生イチジクの結実木を探しに行けるかとかなんだろう。カオヤイの結実パターンは群集レベルでは温帯に近いけど温帯の冬ほどの資源制約にはならない年が多いので、結果的に果実資源量は温帯や熱帯と比べても多いのではないかと思うのだけど…。フェノロジー論文どうにかしたいなあ。

次は私がアグライアの種子散布の話を紹介。アグライアの話よりも現在、日本で取り組もうとしている付着散布の研究のほうがインパクトあったようす。まあ、ベストショットがたくさんあるわけではないけど、自動撮影カメラを利用した種子散布研究は国内でも続けていく予定。

最後は中島さんがカメラトラップを使って哺乳類の密度をどうやって推定するのかという話とその過程で見つけた面白そうな現象の紹介。毎年15名もの卒論生を対応するのは大変そうだけど、千葉県内だけで300台ほどの自動撮影カメラを設置していて、そのデータの解析とかでかなり人力が必要な様子。先日の哺乳類学会の自由集会でプレゼンした内容がベースになっているとは思うけど、単にスライドを眺めるよりは、本人がじっくりとプレゼンしたものを聞くとやはりわかりやすい。哺乳類散布の果実がどのくらい自然落果するもんなのだろうか。

その後はネパールカレーのお店で夕食を食べて、関空に向かうCorlettさんと京都に向かう佐藤さんと一緒に名古屋まで移動して解散。久しぶりに英語で研究漬けの時間を楽しみました。
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インド打ち合わせ三日目 [研究]

今朝も5時半に起床して、シャワーを浴びて目を覚ます。昨日よりはよく眠れたけど、今夜のフライトで帰国してしまうのがもったいない。入り口付近のイチジクからゴシキドリやインコの仲間の鳴き声が聞こえてくるので、朝食前にしばらく観察。カメラを持ってくるのを忘れたのは失敗だったなあ。あまり時間もないかと思っていたけど、こんなところでイチジクが熟していたのなら、普段、あまり撮影する機会のない小鳥たちを撮影するチャンスだったのに。

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朝食は初日と同じ場所でドーサをいただく。今日は前回とは異なるマサラドーサをいただいたのだけど、追加注文された品もいただいたので、朝から満腹。

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朝食後はSoumyaさんを待ちながら、昨日のデータ入力の続きと次にやるべきことの検討。すでに集めたPDFから食性情報はデータベース化されているので、移動距離の推定について再検討。Kinnaird & O’Brien (2007)と同様に単位時間当たりの移動距離だけで種子散布距離の指標としておけば、それほどおかしなデータにはならないし、アグライアだけではなく、カナリウムについても検討できそう。というわけで、サンバーとホエジカの行動圏の論文を探して、それについても移動距離データを検索しておく。この辺の情報から、種子散布距離を推定して、質的な指標の一つとして使えば、それぞれの影響を評価できるだろう。

NIASで昼食をいただいてから、15時前にタクシーで今日の会場へ移動。30分ほどで到着したけど、途中に通り過ぎたITタウンとそのすぐ近くの建設労働者の住居のギャップが大きすぎる。Ashoka trust for research in ecology and the environmentは共同研究者の一人のアシュミタさんがポスドクとして所属している組織の一つ。15時45分から、30人ほどの聴衆に向けて辻さんがマカクの種子散布の話題提供。うーん、わたしも未発表データの話ではなくて、FSD2010の話をアップデートして話したほうが良かったかもな。少し時間をオーバーしてセミナーは終了。

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その後、オーガニック製品のお土産屋さんに立ち寄ってから、NIAS近くの屋台が集合した場所で夕食。南インドの伝統的な料理をいただきました。夕食後は二人にお別れして、宿に戻って、帰国の準備。21時に迎えに来てくれたタクシーに乗って空港に向かう。

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インド打ち合わせ二日目 [研究]

体が慣れてきたのか4時に目が覚めてしまった。さすがに早すぎるので5時半に起床して、シャワーを浴びて目を覚ます。メールチェックで急ぎのものに返事をして、その後はサラワクのカメラトラップデータからベストセレクションをマレーシアのカウンターパートに送付する準備。朝食はSoumyaさんの家族の家にお邪魔していただく。NIASからトゥクトゥクのような乗り物で移動。小回りが利いて便利だけど、乗るのはちと怖い。南インドの伝統的な朝食をいただいたけど、ジャックフルーツの葉をケースに使った料理もあった。

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朝食後は打ち合わせルームで仕事。わたしはひたすら収集した文献から情報を抜き出して、サイチョウ類の食性データベースをアップデートする。昨日、プレゼンしたさいに質問された内容についても新しく解析してみないかと言われたけど、ちょっと微妙なんだよなあ。大型の果実食著類の果実形質の大陸間比較はかなり前に考えたことがあったけど、新熱帯の裂開果は霊長類も利用するものが多いので、あまり明瞭ない傾向が出ないんだよね、多分。午前中に初めて今回のインド側メンバー4人と日本側メンバー2人が同時にそろったのだけど、写真を撮るのを忘れてしまった。

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昼食はNIASランチで、その後、Kimさんが空港に移動し、15時半のコーヒーブレイクまでは、午前の作業の続きを行ったので、手元の文献についてのデータ入力は終了。ただ、すぐに使えないものもあるので、帰国後に本と比較してみないといけない情報もありそう。16時からは前回も参加した水曜セミナー。Women in Scienceというテーマで、インドの研究業界における女性の現状についての話題。時間をオーバーして話していたけど、日本のよりは女性の進出が進んでいるような印象を持った。

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夕方はAsmitaさん宅に招かれての夕食。思いのほか長時間滞在していたので、部屋に戻ってきたのは10時前。さすがに疲れました。でも明日のこの時間にはもう空港なんだよね。もう1週間くらいられるのであれば、西ガーツのほうとか連れていけたんだけどと言われたけど、こればっかりは仕方がない。

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インド打ち合わせ初日 [研究]

5時前から鳥の鳴き声などで目が覚める。インドトサカゲリの鳴き声がするけど、この辺に湿地なんてあったっけか?あと野良犬の鳴き声も多い。昨夜は2時半ごろまで寝付けず、ここで起きると寝不足になるので、6時まではごろごろしている。8時にカウンターパートの学生が朝食に連れて行ってくれることになっていたので、7時ごろから起床して、メールチェックなど。年度末の報告資料などが送られてきているので、サクサクと受け取りの返信メールを送付する。

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8時に学生と一緒にNIASの近くで朝食。朝から腹いっぱい食べてしまった。その後は11時から打ち合わせの時間までスライドを見ながら発表練習。40分くらいで話せるだろう。11時に部屋の前で待っているとKimさんが出てきた。彼女も先ほど到着したらしい。続いてカウンターパートのSindhuさんがやってきてご挨拶。Soumyaさんもほどなく到着したので、ミーティングルームへ移動して、ここ数か月のそれぞれの担当論文の進捗状況の報告。わたしのサイチョウ論文も5月中にどうにか図表をまとめきって方法と結果くらいは書き上げてしまいたいなあ。Asmitaさんは午後のセミナーから合流するそうだけど、Sindhuさんはお子さんの調子が悪いとのことで、午後は帰るらしい。

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昼食後もミーティングルームで個別のうちあわせ。Kimさんから口幅サイズのデータが載っているwebsiteを知らないかといわれたので、そんなものはないけど、大型の果実食鳥類の口幅であれば、ひとはくと山階で測定したものがあるので、データを送っておく。役に立ちそうな情報が含まれていたようで何より。15時前にタクシーで今日のセミナー会場のThe National Centre for Biological Sciences (NCBS)へ移動。40分ほどで到着。どうも大学院の講義後のセミナーとしてやるらしい。

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4時から20名ほどの大学院生やポスドクを中心とした聴衆に向けてセミナー。さすがに2回目ということもあり、去年よりは落ち着いて話すことができたとは思う。20年前の写真を見せたら、今と変わらんじゃないかと言われたけど、それは気のせいだなあ。あの頃より5キロ以上太っているし、体力は確実に落ちている。アジアゾウにカメラを破壊された写真は受けた人もいたようでよかった。プレゼン後の質問はみなさん積極的で何より。ちょっとAglaia spectabilisの説明不足だったところもあるので、次に話す機会があれば、その辺の情報を付け加えておいたほうが良いだろう。そういえば、種子サイズの話しかしなかったか。

その後はティータイムで1時間ほど、こちらの研究所の人とSoumyaさんたちとの会話に交じりながら、いろいろな話を聞く。明日が研究打ち合わせの本番になりそう。当たり前なんだけど、インド側の研究者もあって話すのはめったにない機会なので、こういったときにいろいろと情報交換を進めているらしい。その後は夕食でおいしい南インド料理をいただいてNIASに戻る。

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インド移動日 [研究]

7時に起床して、朝食は控えめにして、出発の準備を進める。最後にメールをチェックして、セントレアに向かう。セントレアでWifiを回収して、辻さんと合流してチェックインの列に並ぶ。タイ航空もWebチェックインやっているのだから、済ませておけばよかった。まあ、大した行列ではない。シャンプーを持ってくるのを忘れたので、ここで購入したけど、バンコクでの乗り継ぎの時に買えばいいんだった。

セントレアからバンコクまでの機内では、まずはのんびりとバンブルビーとシェイプオブウオーターを見る。残り時間はひたすら明日の発表スライドの修正と練習。去年とほぼ同じ内容で進歩がないのだけど、まったく違う聴衆なので許してもらおう。去年のメモを見ると発表後にさっさと論文化したいと書いておきながら、まったく進展が見られないのはどうかとも思う。バンコクにはほぼ予定通りの時間に到着。5時間も待ち時間があるので、まずはラウンジで少しのんびりと過ごす。今月、カオヤイで新しい写真を撮影したので、一部はプレゼンファイルの写真を入れ替える。

ラウンジを追い出されてからは、ちょっと豪華な夕食をいただき、コーヒーを飲みながらスライド修正の続き。話を膨らまそうかと思ったけど、学生が多いようなので、アジアゾウに破壊された自動撮影カメラの写真とかをいれてみる。まあ、うまくいく調査ばかりではないからね。

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バンガロールへの乗継便に乗る頃には眠くなっていたので、バンコクからはほとんど寝ていたので、あっという間にバンガロールに到着。入国手続きのところも去年よりは並んでいる人が少なくて、ラッキーと思っていたら、ここで手間取る。去年はe-VISAとパスポートを提出したら、あまりごちゃごちゃ言われなかったけど、今回はInvitation Letterはないのかとか、宿泊先はホテルではないけど、どうなっているんだ?とかいろいろ聞かれる。最終的にはインド側のカウンターパートのメールを見せて、納得してもらう。Gmailをオフラインでも見られるようにしておいてよかった。荷物を回収して、1万円だけ両替しておく。空港内で今夜の飲み水を購入して、迎えのタクシーを探す。

宿泊先のNIASには1時半ごろに到着。さっさと水浴びして就寝しようとしたけど、さすがに機内で数時間寝たので、寝つきが悪い。

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タイ調査帰国日 [研究]

離陸直後からグリーンブックを見てしまったので、2時間ほど仮眠をとっただけで朝食の時間になる。まあ、昨日はカオヤイからの移動のタクシーの中でも仮眠をとったので、それほど眠いわけではない。朝食後はVenomを見ている間に羽田に到着。良い天気だけど、花粉がいっぱい飛んでいそう。羽田ではいったん荷物を受け取ってから国内線に移動。ピライさんからお土産にタイ米を1kgもらったのだけど、植物検疫で没収されてしまった。去年から厳しくなったんだった。バンコクにいる間に確認しておけばよかった。

今回、羽田経由を初めて利用してみたけど、短期間の滞在であれば、往復ともに真夜中便でもなんとかなりそう。電車に4時間揺られることを考えれば、小松までの1時間のフライトと自分で車を運転するほうがずっとらく。何よりも小松空港でのチェックインが楽なので、今度、タイに行くときには、また利用を考えてみたい。小松行きは少し遅れた程度で、無事に到着。曇り空だけど、雨は降っていなかったし、何より寒くはない。ほぼ予定通り10時半ごろに自宅に到着。

明日は通常業務に復帰して、ポスターを作らないと。
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タイ調査六日目 [研究]

6時前からうろうろと動き出す人が出てきたけど、まだ暗いのでしばらくは外から聞こえてくるシロテテナガザルの鳴き声が楽しむ。明るくなってきたので、6時半ごろからカメラをもって、キタカササギサイチョウの鳴き声がするほうに向かって散歩する。ゴルフ場方面に向かって移動しているとシワコブサイチョウの羽音。日の出直後の空をオスが飛んできてきれいだったけど、写真は撮れず。止まった先にキタカササギサイチョウが見えたので、ゆっくりと近づいていくと、何羽も飛んでくるのが見えた。群れでいるらしい。驚かさないように近づいて観察してみると、クワ科のツルの果実を食べていた。キタカササギサイチョウ、これ好きなんだよね。まだ熟している果実が少ないので、探し回っている様子。

写真を撮りながらしばらく待っていると何羽もやってきて、最終的には20羽ほどが同じ果実を食べていた。カオヤイに住んでいた頃にもこんな近くで見たことないなあ。まだ薄暗い時間帯だったけど、キタカササギサイチョウが複数羽でいる写真は撮ったことがなかったので、たくさんシャッターを切った。もうちょっとシャッタースピードを上げたほうが与勝他ものもあったけど仕方がない。果実をほうり投げているところはもうちょっとうまく撮影したかったなあ。と、背後で物音がするので振り返ると、大きなオスのサンバーが歩いてきた。泥浴びした直後なのか、かなりドロドロの体をしていた。

7時に宿舎に戻って朝食を済ませて、7時半に出かけるスタッフたちを見送る。わたしは10時にカオヤイを出発する予定なので、それまでに昨日の調査メモとVijakさんから依頼された関連文献を探しておく。タイにいる間にできることは済ませておきたい。10時に予定通り宿舎を出発して、プラチンブリ方面に向かう。こっち方面の道路に来るのも15年ぶりくらいではなかろうか。この道も何十回とアジアゾウの糞を調べるために通ったのでよく知っているけど、新しく塩場が作られていたり、いろいろと変わっているところもあった。古くからある塩場には真新しいゾウの糞が落ちていた。

プラチンブリ方面のゲートを抜けてからもずいぶんと景色が変わっていた。こちらもリゾート施設が増えたようす。ピライさんのところに2時に到着する予定だったのだけど、ドライバーの方がバードウオッチャーということもあり、バンコクの手前の探鳥地Pak Phliに立ち寄る。Black kiteが有名といっていたけど、それってトビだよなあと思いながらも、バンコクに早くついても仕方がないので、連れて行ってもらう。

昔は湿地帯だったところを土地改良して植林しているようす。その水路とかにいる鳥やトビが飛んでいる様子を車で移動しながら眺める。コサギ、チュウサギ、ダイサギ、ムラサキサギ、インドトサカゲリ、アジアコビトウ、スキハシコウなんかがうろうろしていて、時々、カワセミやアオショウビンが見られた。電線にはミドリハチクイとかオウチュウが止まっていた。オニバスやスイレンの上を歩いている鳥がいると思ったら、アジアレンカクだった。なるほど、こんな環境に暮らしているのか。30分ほどうろうろして、普段、森の中では見ることが少ない鳥たちをいろいろとみることができた。

ところが土曜日だというのにバンコク市内へ入るところで渋滞につかまる。結局、予定よりも30分遅い時間にピライさんと合流。遅い昼食をいただきながら、簡単に今回の調査報告と今後の調査の打ち合わせ。新しく何かを始めるよりも既存のデータをうまく活用したほうがよさそう。実生枠データは解析してみて、4種と1種の場所で比較してみよう。ただ、森の樹種構成がそもそも大きく違うので、どのような形で比較するのかはちと難しい。

18時前から近くのタイ料理屋で夕食。この辺もいろいろと変わっているなあ。ピライさんたちはサラワクで新しく共同研究を行っているのだけど、5年間で自立したシステムを確立できるかどうかはここ数年間の頑張りにかかっている様子。水上ボートで6時間はなかなかしんどいなあ。ただ、サラワクでもいい森にはまだサイチョウたちが暮らしていて、繁殖もしているらしい。

19時過ぎにカオヤイから連れてきてもらったタクシーに迎えに来てもらって、空港まで送ってもらう。わたしがピライさんと打ち合わせしていた4時間ほどの間もタクシーとして仕事していたらしい。土曜日だというのに渋滞していたけど、20時前に空港に到着。さっさと荷物を預けて身軽になってから、ラウンジで調査メモをまとめてしまう。いつものコーヒーをお土産に買い足して、フライト待ち。予定通りの時間に離陸して、帰国の途につく。
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タイ調査五日目 [研究]

今日は宿を移動するので、メールをチェックしてから荷造りを済ませる。7時に朝食を食べてから、残りの調査で使う荷物と日本に持ち帰る荷物に区別してパッキングする。今回は天気にも恵まれたので、多く持ってきすぎた調査服とTシャツは置いていくことにする。前回、カオヤイに置いていった双眼鏡は修理が必要なので、私が今回持ってきたものと交換する。8時に迎えに来るのかと思って、荷造りを終えて待っていたけど、9時だったらしい。1時間ほど写真を整理したりして過ごす。別の部屋には宿泊していた女性も支払いをしていたのだけど、蚊がめちゃくちゃ多かったと言い残して去っていった。確かに私の使っていた部屋でも1階のトイレには蚊がたくさんいた。

道路際でキタカササギサイチョウが営巣木に来ているというので、止めてもらって、写真記録を残しておく。まあ、かなり遠いけど、いるのはわかるかな。かなり高いところなので、道路のすぐ近くでもあまり気にしないのかもしれない。道路際の塩場を通り過ぎたときにDipterocarpus gracilisの巨木が幹折れしていたことに衝撃を受ける。オーツさんに確認したところ、数年前に折れたらしい。こういうのを見ると時間の流れを感じるなあ。シワコブサイチョウとキタカササギサイチョウが営巣したそうなので、もともと中に広い空洞があって折れやすかったのかもしれない。20年前と同じ構図で写真記録を残しておく。

今日もまずAntiaris toxicariaの果実を拾って、その後、ビルマサイチョウの営巣木の確認。2ペアが使おうとしているところらしく、どちらも繁殖を開始していないらしい。巣に到着したら、ちょうど営巣木の様子を見に来ていたメスがいた。これで今回の滞在中に4種とも肉眼でしっかり確認できた。まだ営巣は開始していないようす。次は今日の宿にまで移動して、その近くの営巣木の確認。この辺もわたしはあまり歩いたことがない。カオヤイに住んでいた頃は自分の調査ルートを歩き回るので精いっぱいだったから、あまり余裕がなかったということもある。こちらも残念ながらまだ営巣は開始していなかった。

昼食時にサイチョウチームの他のメンバーと合流して、午後の仕事の打ち合わせ。明日は営巣木の観察をするグループと営巣木を探すグループが午前と午後にわかれて活動するらしい。わたしは昨日、オーツさんと訪問したテレビ塔周辺の営巣木の下見についていく。昨日とは完全に真逆の順番に歩いたので、位置関係がようやくわかった。ただ、どうも目的地を間違えていたらしく、私たちがブラインドを設置していないほうの営巣木についてしまった。そこからは昨日のGPSの位置情報を頼りに歩いて、目的地に到着。予定よりも時間がかかってしまった。

下見を終えて、ほかのグループと合流するために待っているとゴルフ場にゾウが出ているらしいとの情報で、観光客の車がやってくる。わたしたちも見に行ってみると確かに立派なアジアゾウが芝生から森に入っていくところだった。こんな明るい環境でしっかりと見たのは久しぶりだなあ。1頭だけのようで、しばらくウロウロしたあと森の中へと消えていった。まだ宿の部屋が確定していないということで、木陰でだべっている。Polyalthiaがたくさん果実をつけていたので、その写真をとって、コウラウンの写真を撮っていると目の前の茂みが動く。さっきのアジアゾウが戻ってきた。そのままゆっくりと池に歩いていき、水浴びを始める。といっても水が少ないので、体を完全に横たえて、水につかっているような感じ。じっとされていたら、まったく気が付かんな。

宿舎は2段ベッドが並んだ36人が宿泊できる大部屋。ブタオザルが入ってくるので窓を開けっぱなしにしてはだめらしい。カオヤイだと夜は冷えるので、まだ暑さを感じているうちに水浴びを済ませてしまう。明日からのトレーニングプログラムに参加するグループがまだ到着しないので、夕飯までの時間はブタオザルの写真を撮影して過ごす。HQ周辺に居ついているグループかな?ちょっと近づきすぎたら、オスに怒られてしまった。

夕食後はVijakさんがサイチョウとサイチョウプロジェクトの紹介。国立公園の紹介ビデオはよくとれている映像なんだけど、違う営巣木の映像をつなげてあるのは、見る人が見ると気が付いてしまうなあ。1時間ほどのプレゼンの後はオーツさんが明日のプログラムについて紹介。話しなれているなあ。プレゼンの後、Vijakさんから去年、カオヤイでデータを収集していた修士の大学院生のデータにコメントが欲しいとのことで、図表を見せてもらう。本当は研究を開始する前に相談してくれると助かるんだけど、終わったことは仕方がない。発芽実験は積算発芽率のグラフのほうがわかりやすそうだし、オオサイチョウとキタカササギサイチョウでわけられるのであれば、わけて提示したほうが良いかな。ただ、サンプル数はかなり少なそうなので、難しいか。アグライアのシードシャドウを調べた研究は結実個体の位置情報がどうなっているのか見ないと何とも言えなさそう。ただ、そんなにおかしなデータにはなっていない気はする。ここ数日は22時には寝ていたので、23時になると眠い。

明日はトレーニングに出かけるスタッフを見送ってから、わたしはバンコクへ移動。バンコクでピライさんと今回の調査と今後の打ち合わせをして帰国する予定。
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タイ調査四日目 [研究]

今朝も6時前に起床。7時前にオーツさん宅へ移動して、朝食。今日は週末のトレーニングプログラム用の営巣木での観察に備えてブラインドを修理するお手伝いとその近くのアグライアを見てまわる。山歩き3日目になるとかなり体がスムーズに動くなあ。Khao Kheioに向かう道に来るのは前職で来ていた頃なので、10年ぶりくらい。途中、バードウオッチャーのグループが道路上のセキショクヤケイを観察していたけど、私たちが通過したら森の中に逃げ込んでしまった。

車を降りてからは、まずはオオサイチョウの営巣木を目指して森の中を歩く。途中、オオサイチョウやキタカササギサイチョウの鳴き声が聞こえていた。ブラインドが見えて、中に入って巣の様子を写真撮影しようとするとちょうどオスが給餌にやってきた。最大望遠にしてみたら、さすがに手ぶれしていたけど、Coolpixだと余裕で撮影できるなあ。あとで拡大してみたら、イチジクの果実を運んできていた様子。こちらは去年のブラインドを修理するだけなので、それほど時間がかからず、次の調査地へ移動。

巣穴へ移動する前に昨日、歩き疲れて通り過ぎた二次林の中を歩いてみる。数個体だけどアグライアの実生と少し大きくなってから一度刈り取られた個体を発見。こんな小さい森でもあるところには実生があるということか。まあ、キタカササギサイチョウはこの辺でもよく見かけるので、運んでくるのかもしれない。

次の巣穴はカオヤイのテレビ塔のところから森へ入る。たまたまカオヤイで調査を始めた1998年にご近所さんとして暮らしていたサーさんにお会いした。最後にお会いしたのは2002年なので、17年ぶりか。長期滞在していた頃の知り合いということもあり、「今回は何箇月いるんだ?」と聞かれた。そうだよなあ、あの頃の滞在基準は数か月単位だったからなあ。

こちらではビルマサイチョウ(本当は分離されたので、別の和名が必要なんだな)の営巣木でブラインドを設定。先ほどのオオサイチョウの営巣木よりはずいぶんと小さく見えるけど、昨年、オーツさんが修理したらしい。ブラインドを設定中、近くでビルマサイチョウの鳴き声が聞こえていたけど、給餌は確認できなかった。ブラインド設定後もしばらく観察してみたけど、訪問は見られなかった。その後は周辺の営巣木をいくつか確認しながら車に戻る。同じ木にシワコブサイチョウとキタカササギサイチョウが営巣しているらしい。あんな近くでも気にならないんだね。最後に訪問したGH38は1998年に調査を開始したころに何度か通ったので懐かしい。でもWH29のデータと一緒に論文化されずに眠っているんだよね。

テレビ塔で昼食を食べてからは33Kポイント付近へ移動して、アグライアのちょっと不思議な個体を見学に出かける。通常、結実個体の周辺にはほとんど実生が見られないのだけど、この個体の周辺には若い実生がたくさんあるらしい。落下した種子がヤマアラシに食べられないのか、食べつくせないほど落下しないとそんな現象にはならないはずなんだけどな。ただ、実際にその個体の周辺を歩いてみると、今まで見たことがない密度で2年生くらいの実生が見られる。オーツさんによると最初に発芽したばかりの頃には、踏まずに歩けないくらいの密度だったらしい。ただ、大きくなっている個体は全く見られないので、なんらかの密度効果が効いているのかもしれない。経験上、アグライアの実生の葉に食痕は少ないのだけど、ここの個体はやたらと葉に穴が目立つ。いろいろと考えが浮かぶけど、また結実時期が終わったころに見てみたい。

宿舎に戻ってからはいつものように水浴びと洗濯。その後は写真を整理して、調査メモを残す。最近は海外調査の時には野帳を新しくしていたのだけど、今回は普段の続きで使ってしまったのが失敗。新しい野帳なら1冊に収まるくらいの分量だった。

夕方からパクチョンに買い出しに出かけたので、ついでにお土産用のタイ料理のもとを購入。以前、日本語新聞を取り置きしておいてくれた本屋のおじさんは相変わらずだった。お土産用の虫スナックがスーパーになかったので、店員に聞いてみたら、スマホでさっと調べてくれて、コンビニにあると教えてくれた。さっそく行ってみると確かに売っていた。ハイソーというらしい。2種類の味付けを購入して、お土産にする。夕飯のデザートはカオニャオマムアンとカオニャオドリアンを贅沢にいただきました。調査しているけど、食べる量が増えているので、結局、体重はかわらないかな。
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