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石川の自然まるかじり [本]

昨年の後半から同じ学科のスタッフ全員で、それぞれの研究活動を基盤として、石川県の自然環境を紹介する書籍にまとめました。石川県立大学の環境科学科はこんなところです!と紹介している本です。ウガンダの森で日中はチンパンジーを追いかけながら、夜はこの本の原稿で頭を悩ませていました。いうまでもなく、私は2-2森のフルーツを食べるのは誰だ?を書いています。自動撮影カメラで記録した季節の果実を食べる動物たちを紹介しています。

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表紙がヒヨドリ推しになっているのは、イラストを書いた学生が鳥好きだった影響で、わたしが無理強いしたわけではありません。ただ、赤い果実をつまんでいるくちばしの細部は修正してもらったけど…。

石川の自然まるかじり
石川県立大学自然まるかじり編集委員会:編
A5判 142ページ並製
定価:1,800円+税
ISBN978-4-486-02103-2 C3040

【内 容】
加賀百万石を育んだ自然と風土が見えてくる―見たり、触ったり、感じたりのフィールドワークを重視した研究・教育活動からちょっこし石川県の自然を紹介する。

【目次】
第1章 天からのめぐみ
 1-1 雨は大気の掃除屋さん
 1-2 人が近づけない場所の雪の秘密を探る
 1-3 水を測る・量る・計る
 column 1 石川:冬のかみなり
第2章 生きものたち
 2-1 金沢城のツキノワグマ
 2-2 森のフルーツを食べるのは誰だ?
 2-3 カビとともに生きる
 2-4 森と海をめぐるアカテガニの大冒険
 2-5 落ち葉を食べる海岸林の生きものたちと微生物
 2-6 イカリモンハンミョウを守るために
 column 2 幻のバッカクを求めて
第3章 水を活かす
 3-1 加賀平野を潤す
 3-2 魚たちのかよう水路をつくる
 3-3 絵になる農業用水
 3-4 潟とともに生きる
 column 3 らせん水車
第4章 食とくらし
 4-1 「まれ」の蓮蒸し
 4-2 赤土で育つスイカはなぜおいしい?
 4-3 人が減っても農地は守る
 4-4 ごみとエネルギー
 column 4 コメの「セシウム」
 石川の気象関連データ
 石川のおすすめ環境関連施設
 おわりに

フィールドの生物学18巻 [本]

17巻のクモヒメバチの著者とは違って、こちらは小さい頃からの生き物オタクっぷりが満載の本。ただ、2冊続けて読むと共通点も多いことに気が付く。

湿地帯中毒 身近な魚の自然史研究
著者 中島淳
体裁 B6判 272頁 並製本
本体価格2000円+税
出版社: 東海大学出版会
刊行 2014/10
ISBN978-4-486-01999-2

わたしも小さい頃に川で捕まえたナマズの稚魚や田んぼで捕まえたドジョウなどを自宅の水槽で飼育していたけど、比較にならない。淡水魚が豊富な環境って、あこがれるなあ〜。湿地帯に暮らす生き物への愛にあふれた一冊です。一般向けの生き物観察会などでもカマツカ布教につとめている様子。魚だけではなく、水生昆虫の情報も満載です。こういった生物好きで、学位を持っている人が生物担当者として関わることができる都道府県が増えるとよいなあ。

あと、小さい頃によい図鑑に出会うかどうかは大事。

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フィールドの生物学17巻 [本]

10月中に手元に届いていたけど、先週末に寝込んでいた時にごろごろしながらようやく読み終えた。対象生物を探すところから、かなり苦労したらしい。特にいきもの好きでもない人が、生態の良くわかっていない生物を探すのは大変だったろうなあ。この辺は同時出版された18巻の著者とは対照的。苦労して調査方法を確立したと思ったら、先行研究にすでに書かれていたとか、本人からするとがっくり感じるようなこともあったらしいけど、考えた挙句、先人と同じ手法にたどり着いたと思えば、ちょっとした自信にもなるだろう。

本の最初にクモ全般の情報が網羅されており、特にクモ好きでもないとここで挫折する人がいるかもしれない。けど、この部分を通読するとかなりクモの知識が増えることは間違いない。とても丁寧な仕事ぶり。わたしは普段、クモの論文とか読むことはほとんどないけど、好きな生き物の一つなので、いろいろと豆知識を仕入れることができて、単純にうれしい。今度クモを見つけたら、寄生されていないかチェックしてみよう。ちなみに実家の庭では、30年ほど前にわたしが近くの神社から連れてきたジョロウグモたちの子孫と思われる連中が今でも巨大な網を張っています。

今年は春から冬まで定期的に大学のビオトープ池で植物の開花・結実フェノロジーを調査していた時に調査地内のクモ相もずいぶんと変化することが見てとれたので、もう少し真面目にクモの撮影記録も残しておこう。自動撮影カメラで越冬したがるクモたちもそれほど種数は多くなさそうなので、記録してみようかしらん。

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大学ビオトープのオニグモ?

クモを利用する策士、クモヒメバチ
身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い
著者 高須賀圭三
体裁 B6判 304頁 並製本
本体価格2000円+税
出版社: 東海大学出版会
刊行 2014/10
ISBN978-4-486-01998-5

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クマムシ研究日誌-地上最強生物に恋して― [本]

わたしがクマムシという生物を認識したのは、学部の無脊椎動物学の講義だと思う。動物たちの地球を参考にしながら、レポートを書いた記憶が残っている。クマムシとは縁のない生活をしていたが、日本に帰国して学位論文をまとめていた頃につけたテレビから「そ・れ・は・ク・マ・ム・シ(だったと思う)」なるシュールな歌が聞こえてきたことを覚えている(むしまるQゴールドで流れていた歌だったらしい)。その後、岩波科学ライブラリーの「クマムシ?!―小さな怪物」を読みはしたけど、イロモノ生物のネタとしての興味はあったが、研究対象には考えたことはなかった。今では、実体顕微鏡くらいは使うので、研究対象として小さすぎるということはないけど…。

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よく見るとこっそり増えている。

本書では、わたしたちの身近にいて、その特殊能力についてはよく知られているけど、基礎的な生態情報はほとんど知られていないクマムシを対象として、さまざまな研究室を渡り歩き、自ら飼育システムを確立し、研究を進めてきた著者のいきざまが描かれている。フィールドの生物学シリーズでは、野外調査のハードワークが描かれているものが多い。野外でのクマムシのサンプリング自体は楽しそうだけど、調査対象の飼育システムを確立し、それを研究するだけのサンプル数を稼ぐことができるようにするまでのプロセスがすさまじい。そりゃそうだ。何を食べているのかもよくわからない生き物を飼育し、繁殖させていくのだから。しかし、健康食品?として流通しているクロレラって、よくできているものらしいということはわかった。わたしも実験室の片隅でヤマナメクジを飼育して3年目になるけど、いまだに彼らの好みはよくわからない。そうそう、国際学会での出会いって大事だと思います。

参考文献に!?というものも並んでいるけど、そんなことは気にしない。生態学会の受賞講演でも変わった文献を引用していた人いたからなあ〜。とりあえず、今週の1年生向けの講義でバッタ本と一緒に紹介する予定。とりあえず、午後にへばり付いたコケを水に浸しておいたので、明日の午前中に確認してみよう。

目次は以下のとおり。


The Ecology of Tropical East Asia 2nd Edition [本]

午前中は昨日の続きで林業試験場内の自動撮影カメラの設置作業。昨日はカメラの台数が足りなかったので、今日はしっかりと準備して持ち込む。近くの中学校の写生大会らしく、元気な声が響いていた。午前中は天気が持ちそうだし、ちょっと紅葉が進んできた頃で、それほど暑くはないし、写生にはよさそう。秋の山道を歩いているとズボンが種子でいっぱいになる。林業試験場内ではノブキも結実中。森の中を歩くとアカガエルがはねるのが目立つ。ハヤシウマらしきものも見かけた。林業試験場の枯葉だまりで以前、見かけた個体もハヤシウマだったのだろうか?

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色づいてきたマムシグサ

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今日は訪花昆虫もいた

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カキが入った糞。テンだろうか?

8月に参加した学会で、Corlettさんがもうすぐ出版されるからと宣伝していたEcology of Tropical East Asia 2nd Editionが届いた。
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表紙のテナガザルの写真が新しくなっていて、今回はアジルテナガザル。ざっとしか眺めていないど、写真がずいぶんと更新されており、種子散布関係はアイムサさんの写真が結構使われている。あと文献情報がかなり更新されている。日本人研究者の論文も丁寧に目を通していて、Iida et al. (2014) Ecology 95:353-363とか、Matsuda et al. (2013) Integrative Zoology 8:395-399とか、Yamasaki & Sakai (2013) Australian Journal of Botany 61:60-66とか引用されている。Ecological Researchの担当編集をしていたこともあるだろうけど、Ecological Researchの論文も数多く引用されている。わたしもTropical Conservation Scienceのニクズク科特殊号に出版された東南アジアのニクズク科の果実食と種子散布に関する総説も引用していただいた。ただ、本来は未発表データで持っているサイチョウ類の種子の体内滞留時間を引用したかったみたいなので、できるだけ早く論文化します。

とあるところから問い合わせメールが来たのだけど、すみません、いずれも私の専門外の生き物たちです。どうやって私にたどり着いたのか、ちょっと知りたくもあり、関連キーワード検索してみたけど、自分のサイトにはヒットしなかった。うーん、なぞだ。

新天地へ旅立った方からメールが届いた。さらに北上したらしい。

今週末は運動会などあるので、明日までに月曜日締め切りのお仕事を終わらせねば。

フィールドの生物学13巻と14巻 [本]

今週は採点仕事に集中。台風の進路によっては、週末からの予定がいろいろと変更になりそう。予約していたフィールドの生物学の新刊が手元に届いた。採点仕事と査読仕事と国際学会準備を終えてからの楽しみになる予定だけど、17日からの国際学会の飛行機まで時間がとれないかも。手に届くところにあると読んでしまいそうなので、とりあえず家族に貸出。

フィールドの生物学シリーズ13巻
イマドキの動物ジャコウネコ: 真夜中の調査記
著者 中島啓裕
体裁 B6判 208頁 並製本
定価 2160円(税込)
出版社: 東海大学出版会
刊行 2014/08
ISBN-13: 978-4486019954

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フィールドの生物学シリーズ14巻
裏山の奇人: 野にたゆたう博物学
著者 小松貴
体裁 B6判 276頁 並製本
定価 2160円(税込)
出版社: 東海大学出版会
刊行 2014/08
ISBN-13: 978-4486019947

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植物生態観察図鑑: おどろき編 [本]

今日は急激に暖かくなったので、朝、起床するのが苦痛にならない。今朝は電車やバスに異常はなさそうなので、大学の後期試験は予定通り開始される様子。今回は試験監督業務からは外れているので研究室で論文書きに集中するつもりだったけど、先に編集業務をいくつかこなす。抱えている査読仕事も生態学会中には終わらせてしまいたい。

生態学会のポスターは結局、印刷しなおして、修正したバージョンを持って行くことにする。といっても3年前にポスター発表した内容からデータをバージョンアップしたので、構成はほとんど変更させていない。位置データの取り扱いなどは、GPS使った先行研究を行っている人からコメントをもらいたいところ。ポスターをA4サイズまで折りたたんで持っていけないかやってみたけど、かなり折り目が目立つ。おとなしく図面用の筒にポスターを丸めてしまう。来年度の卒研生には、進学希望者がいるので、生態学会に参加してみることをすすめておく。せっかく学部生の大会参加費を無料化しているし、事前に関連学会に一度くらいは参加して、学会の雰囲気を知っておいて欲しいところ。学生証忘れずに持って行くだろうな~。

午後は昨日、著者割で手に入れた図鑑を眺める。

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本多郁夫 (著) 植物生態観察図鑑: おどろき編 

前著の「知るほどに楽しい植物図鑑」でも素晴らしい写真が掲載されていたけど、今回も思わず「へー」と思った内容がたくさん掲載されている。著者のHP(石川の植物)はよく見ているので、既にそちらで紹介された写真が多いけど、一冊の本としてまとまった状態でパラパラと眺めることができるのはとても良い。野外でも自宅の庭でも徹底的な観察に基づいた話題が多数提供されている。もっとも私にとって有用なのは、著者が石川県在住(しかも大学の近所)で、このあたりの植物の情報が多数掲載されている点。個人的に調べてみたいネタも含まれているので、一度、直接お話を伺いたい。

明日の午後から広島へ移動。18日の朝までは広島にいる予定です。明日の午後は雨が予想されているので、電車の乗り継ぎがちょっと心配。生態学会に参加されるみなさま、手元に届いているはずの大会プログラム冊子はお忘れなく。最近はスマホやタブレットPCで見る人が多いのかもしれないけど。

フィールドの生物学シリーズ12 [本]

出版直後に購入したのだけど、卒論を書く際の参考になるだろうと学生に渡していたので、ようやく読了。調査対象は違うけど、研究テーマはよく似ているので、サクサクと読み進んだ。

フィールドの生物学シリーズ12巻
クマが樹に登ると―クマからはじまる森のつながり
著者 小池伸介
体裁 B6判 226頁 並製本
定価 2100円(税込)
出版社: 東海大学出版会
刊行 2013/09
ISBN-13: 978-4486019930

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ツキノワグマを中心に動物による種子散布の研究について必要な事柄や想定される困難など、いちいち納得しながら読んだ。日本国内の動物による種子散布の研究は、過去10年くらいに急速に論文化された情報量が増えた。その理由の一つは、著者である小池さんらによる種子散布者としてのツキノワグマの生態系機能に関する研究の進展がある。とても大型哺乳類を対象にしているとは思えないペースで数多くの論文を書いており、本書には、それらの内容がコンパクトにまとまっている。いきなり英語の論文には、手を出しにくいという学部生にもすすめやすい。国内外を問わず、動物による種子散布を研究テーマとして考えている大学生なら必読の一冊。

カオヤイにいた頃にツキノワグマやマレーグマの糞内容分析をやったことがあるし、森の中で遭遇したこともある。もちろん、サイチョウが調査対象だったので、積極的にクマを探していたわけではないが、糞を拾った回数もそれほど多くはなかった。ただ、ブタオザルやテナガザルと比べると一つの糞に含まれる種子の量が多く、洗ってから種子数を計数するのが結構大変だったことはよく覚えている。大量に種子が含まれていたCinnamomum subaveniumについては、いくつかの糞を野外で追跡調査もしてみたけど、発芽後に死亡したものがほとんどだった。当時はツキノワグマの糞から、直接発芽したものはあまり生存率が高くなさそうだと判断していたけど、小池さんの研究のようにネズミや糞虫の二次散布まで考慮すると意外とクマ糞から少し離れた場所で、ひっそりと生き残っていた実生がいたのかもしれない。

本文とは関係ないのだけど、同じフィールドワーカーとして感心したのは、著者本人が撮影された写真がいくつも掲載されている点。当時から、かなり意図して撮影していたのではないだろうか。それとも私が単に森のなかで単独行動をしていたことが多く、チームで動く場合はある程度、他の人が撮影することもあるか。

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全巻そろえるとこんなにカラフル(アリは貸出中)。

海外のマムシグサの種子散布について関連文献を取り寄せてみたら、野外で果実食を観察したのではなく、普段は食べていないけど、他の果実と一緒に給餌してみたというものだった。ちゃんと要旨を読んでから取り寄せ依頼するべきだった。まあ、食べているという情報にはなるから、とりあえずメモ。

美ら島の生物ウォッチング100 [本]

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国内最大種のサワガニがドングリをそんなに食べているとは知りませんでした。巣穴に持ち込まれたものは発芽する可能性は低いだろうけど、落下したドングリの種子消費者としては、場所によってはかなり大きな割合を占めているのかもしれない。クリスマス島のアカガニほどのインパクトはないにしても、陸ガニの生態系機能はもうちょっと評価されてもよいのかも。

せっかく、こんな図鑑があっても沖縄の自然を楽しむことができるのは、いつになるのだろうか。しばらくは図鑑を眺めて、行ったつもりになっているか。でもせっかく西表島に知り合いがいるのだから、何か研究テーマを考えてみようかしらん。

The Ornaments of Life: Coevolution and Conservation in the Tropics [本]

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鳥学会シンポジウムでの講演を引き受けた際、送粉系の論文はあまり読んだことがないからと思い、まず注文したのがこの本。結局、鳥学会のシンポジウムまでに届かなかったので紹介できなかった。今日になって届いたので、これから読み進めて、今年度中に投稿する総説には、その内容を反映させたい。内容的には、12月の霊長類研究所での集中講義にも活用できそう。Corlettさんの本は既に邦訳がでたので、あえて紹介する必要もない気がする。

著者のTed Flemingさんにお会いしたのは、2004年のシーサンパンナでのシンポジウムに参加した時で、2005年のOIKOSに掲載された新熱帯と旧熱帯の送粉系と種子散布系を比較した研究の話題提供だった。今回の本の内容の一部については、FSD2010の特集号として2011年に総説が掲載されているので、そちらをざっと読みなおしてから、読み進める予定。残念なのは掲載されているオオサイチョウの写真。飼育個体だろうけど、あまりカスクの状態がよくなさそう。

明日から後期の講義がスタート。