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カントウマムシグサの種子散布の論文 [研究]

今朝、めでたく受理通知が届いたカントウマムシグサの種子散布に関する論文。

大石里歩子, 前田大成, & 北村俊平 (2020) 日本の温帯林におけるサトイモ科カントウマムシグサの種子散布者としての鳥類の有効性:果実の持ち去り量と発芽への影響. Bird Research 16:XX-XX.

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2012年に石川県立大学に来てから、自動撮影カメラを利用して林床の果実持ち去りを定量化する研究を続けています。サトイモ科テンナンショウ属については、すでに関東地方や西日本の先行研究から、主な果実消費者は鳥類であることは明らかにされています(Suzuki & Maeda 2014a, b, 小林ほか 2017)。

Suzuki T & Maeda N (2014a) Frugivores foraging on a Japanese species of the Jack-in-the-Pulpit, Arisaema angustatum (Araceae), with reference to the general framework of the links between Arisaema and its major frugivore groups in Japan. Biogeography 16: 79-85.

Suzuki T & Maeda N (2014b) Frugivores of poisonous herbaceous plants Arisaema spp. (Araceae) in the southern Kanto district, central Japan. Journal of the Yamashina Institute for Ornithology 45: 77-91.

小林禧樹, 北村俊平, & 邑田仁. (2017) 日本産テンナンショウ属(サトイモ科)の果実熟期の分化と鳥類による種子散布. 植物研究雑誌 92:199-213.

私たちの研究では、石川県内のカントウマムシグサArisaema serratumの果実消費者とその持ち去り量を2か所の調査地で3年間にわたり調査し、種子散布者としての量的な有効性を解明しました。さらに量的に有効な種子散布者が散布した種子の発芽実験から、質的な有効性の一部についても検討しました。

カントウマムシグサの果実を利用する動物を調べるため、2013年秋から2016年春にかけて計60個体のカントウマムシグサ(2013年:11個体,2014年:20個体,2015年:29個体)の果実持ち去り動物を記録し、動物種毎の果実持ち去り数を計数しました。果実の持ち去り数の上位3種は、ヒヨドリ(31%)、シロハラ(26%)、トラツグミ(5%)でした。さらにヒヨドリやシロハラが散布した種子の発芽率とコントロールには有意差は見られず、両種ともに発芽能力がある種子を散布していることを明らかにしています。

果実の持ち去り量のデータは2016年までに解析済みでしたが(ファーストの学生)、発芽実験用のヒヨドリとシロハラが散布した種子の回収にさらに3年間を費やしました(セカンドの学生の調査の一部)。過去の卒論の図表を3月中旬から毎晩、少しずつ手直しして、年度末の2020年3月31日に投稿、4月7日(!)にコメントが戻ってきて、4月8日に受理されました。コロナで大変な時期に素早く対応していただきありがとうございました。

先行研究や私たちの結果をふまえると日本国内のかなり広い範囲で、秋に結実するテンナンショウ属の果実を主に消費しているのはヒヨドリとシロハラではないかと考えられます。ちょっと面白いのは、10月から11月の渡り途中に果実を食べるコマドリやマミジロですが、詳細は論文を読んでください。

これで続きの論文が書きやすくなったはず。
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