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クマムシ研究日誌-地上最強生物に恋して― [本]

わたしがクマムシという生物を認識したのは、学部の無脊椎動物学の講義だと思う。動物たちの地球を参考にしながら、レポートを書いた記憶が残っている。クマムシとは縁のない生活をしていたが、日本に帰国して学位論文をまとめていた頃につけたテレビから「そ・れ・は・ク・マ・ム・シ(だったと思う)」なるシュールな歌が聞こえてきたことを覚えている(むしまるQゴールドで流れていた歌だったらしい)。その後、岩波科学ライブラリーの「クマムシ?!―小さな怪物」を読みはしたけど、イロモノ生物のネタとしての興味はあったが、研究対象には考えたことはなかった。今では、実体顕微鏡くらいは使うので、研究対象として小さすぎるということはないけど…。

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よく見るとこっそり増えている。

本書では、わたしたちの身近にいて、その特殊能力についてはよく知られているけど、基礎的な生態情報はほとんど知られていないクマムシを対象として、さまざまな研究室を渡り歩き、自ら飼育システムを確立し、研究を進めてきた著者のいきざまが描かれている。フィールドの生物学シリーズでは、野外調査のハードワークが描かれているものが多い。野外でのクマムシのサンプリング自体は楽しそうだけど、調査対象の飼育システムを確立し、それを研究するだけのサンプル数を稼ぐことができるようにするまでのプロセスがすさまじい。そりゃそうだ。何を食べているのかもよくわからない生き物を飼育し、繁殖させていくのだから。しかし、健康食品?として流通しているクロレラって、よくできているものらしいということはわかった。わたしも実験室の片隅でヤマナメクジを飼育して3年目になるけど、いまだに彼らの好みはよくわからない。そうそう、国際学会での出会いって大事だと思います。

参考文献に!?というものも並んでいるけど、そんなことは気にしない。生態学会の受賞講演でも変わった文献を引用していた人いたからなあ〜。とりあえず、今週の1年生向けの講義でバッタ本と一緒に紹介する予定。とりあえず、午後にへばり付いたコケを水に浸しておいたので、明日の午前中に確認してみよう。

はじめに
第1章 クマムシに出会うまで
型破り教授
クマムシとの出会い
クマムシとの遭遇
カーブのすっぽ抜けが真ん中やや高めに甘く入ってきた
【コラム】 クマムシとは
クマムシの圧力耐性
変な優越感
クマムシの酒
着手
クマムシを誰かにやらせようと思っていた
卒業研究

第2章 クマムシに没頭した青春の日々
パワーエコロジー
背中に深く突き刺さるナイフのような視線
運命のクマムシ
このクマムシ何のクマムシ気になるクマムシ
手なづけられたフェレットのように
大学院生としてやっていけるという自信が確信へと変わる夏
消えた学会発表資料
国際クマムシシンポジウム二〇〇三
【コラム】 人生最大のピンチ到来
クマムシと橋本聖子選手における共通点についての考察
ボゴールの奇跡
熱帯育ちの眠り姫たちに待っていた過酷な試練
クマムシを乾かそう
研究人生の転機
新天地
オニクマムシの飼育
オニクマムシの介護
【コラム】つくばライフ
ガンマ線照射施設に立ち入る
イオン線照射施設TIARA
クマムシ地獄
【コラム】つくばの異次元タイ料理店
飼い犬の鼻先をゆっくりと触れるように
岩のような塊となって肩にのしかかる落胆
最有力候補クマムシ
クマムシ・レボリューション
乾燥スケジュール異常なし
横綱級の乾燥耐性
命名「ヨコヅナクマムシ」
【コラム】乾燥耐性メカニズム
【コラム】乾燥すると縮まるクマムシの謎
宇宙生物科学会議とタコス
NASA進出への伏線
クマムシのなかまの発見と二度目の居候
【コラム】真っ白に燃え尽きるのか
クマムシゲノムプロジェクト始動
【コラム】乾眠クマムシの記憶

第3章 クマムシとNASAへ
学振の生殺し
九回の裏ツーアウトからの逆転サヨナラ
【コラム】アカデミアで研究者になるには
【コラム】余剰博士問題について
新天地2
【コラム】アメリカでの宿探し
クマムシ餌問題
【コラム】ジョン(John)
クマムシと宇宙生物学
【コラム】科学啓蒙に大切なこと

第4章 クマムシ研究所設立の夢
おもしろいことができれば、それでよい

あとがき
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