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キイチゴ果実の量的に有効な種子散布者 [日常]

今日、めでたく受理通知が届いたクサイチゴ、モミジイチゴ、クマイチゴの果実食者を特定した論文です。

西野貴晴 & 北村俊平 (2022) 中部日本のスギ林に生育するキイチゴ類3種の量的に有効な種子散布者. Bird Research 18:A1-A19.
http://www.bird-research.jp/1_kenkyu/journal_vol18.html

2012年に石川県立大学に来てから、自動撮影カメラを利用して林床の果実持ち去りを定量化する研究を続けています。これまでにヒメアオキ、ヨウシュヤマゴボウ、カントウマムシグサなどを対象としてきましたが、いずれも単一種を対象とした研究でした。今回のキイチゴ属(クサイチゴ、モミジイチゴ、クマイチゴ)を対象とした研究では、ほぼ同じ時時期に同じ場所で熟している3種について量的に有効な種子散布者を自動撮影カメラで解明しています。ヒメアオキの研究では、静止画しか使えませんでしたが、今回は動画を利用することで、より詳細な果実消費行動を記録することができました。

調査は2019年5月9日~7月10日に行ない、自動撮影カメラLtl-Acorn6210MCを数十台同時に用いて、熟した果実(クサイチゴ108個、モミジイチゴ489個、クマイチゴ168個)と落果(モミジイチゴ32個)の果実持ち去り動物を記録しました。キイチゴ属3種ともに3週間で83%以上の果実が樹上から消失しました。果実持ち去り数の割合が上位の動物は、クサイチゴでアナグマ(総持ち去り数の30.4%)、ニホンザル(27.8%)、ヒヨドリ(19.0%)、モミジイチゴでヒヨドリ(59.7%)とニホンザル(37.4%)、クマイチゴでヒヨドリ(78.2%)とニホンザル(20.4%)でした。ヒヨドリが散布したクマイチゴの種子の発芽率は3.2%(N=189)でした。果実持ち去り数が上位であったヒヨドリとニホンザル、さらにアナグマはキイチゴ属3種の量的に有効な種子散布者と考えられました。

2020年の秋にバードリサーチ大会で発表した際、卒論データを見直していて、ヒヨドリなどが採食時に果実を飲み込まずに落とした数を再確認する必要があることに気が付き、時間を見つけて映像データを見直していました。2021年12月にようやく見終わり、卒論の図表を投稿用に手直ししていた年末に「キイチゴの世界 生活史の多様性とその適応・進化」の存在に気が付き、年明けまで投稿が遅くなりました。結局、2022年1月11日に投稿、2月1日にコメントが戻ってきて、2月8日にリバイスした原稿を再投稿して、2月9日に受理されました。

この論文のデータを引用する形で、卒業研究を進めていたので、卒論発表会前に受理されてよかった。次は長らく放置されている○○に取り組みます。
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