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ESJ70の口頭発表後のメモ書き [日常]

口頭発表時の質問対応で忘れないようにメモ。

Q:雨滴散布植物の種子は積極的には食べないのか?
A:種子を狙って食べに行っているのではなく、果実を食べる際に種子も飲み込んでしまうようです。給餌実験の際も残された種子は食べることなく放置されていました。

Q:移動速度の測定は結実時期と異なるし、芝生上で行ったことに問題はないのか?
A:もちろん本来の活動時期に現地で測定するのがベストです。ただ、野外だとすぐに隠れてしまう可能性が高く、なかなかサンプル数を稼ぐのは難しいです。発表時には説明できなかったのですが、本調査地のヤマコウラナメクジは春先に産卵して、夏前に死亡する生活史のようです。雨滴散布植物を食べさせる実験を行った時くらいから、産卵後に死亡する個体が増え、緊急事態宣言があけるころには、実験に使える飼育個体がほとんどいなかったという理由もあります。冬前になると春先と同程度のサイズになった個体が見られるようになったので、追加採集して移動速度を測定しました。過去に飼育していたノトマイマイやヤマナメクジよりは素早く動いていると思ます。

Q:ヤマコウラナメクジは種子を食害しないのか?雨滴散布植物の種子は固くないのか?
A:本種は食害しないようですが、他種の柔らかい種子だと食べてしまう可能性はあります。ヤマコウラナメクジについては、かなり好き嫌いが激しいようで、飼育ケージの中に植えてあったコチャルメルソウについても葉や葉柄部分は食べず、果実や果序の一部程度しか食べていません。ただ、外来種のチャコウラナメクジとかは、種子を食べている可能性が高いと思います。例えば、以下の論文などに外来ナメクジの方が種子破壊を行っていることが提示されています。

Blattmann et al. (2013) Gastropod seed dispersal: An invasive slug destroys far more seeds in its gut than native gastropods. PLoS ONE 8:e75243
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0075243

現状、ヤマコウラナメクジ側の種子散布者としての能力はある程度、推定できました。植物側の情報として足りないのは、
・そもそもヤマコウラナメクジが野外で雨滴散布植物を食べているという証拠がない。
・食べていたとしても、個体数密度が低いので、あまり量的には効いていない可能性が高い。ただし、個体数密度については10年に一度くらい、例年よりも一桁以上、高い年があるのではないかと思います。

コチャルメルソウやヤマネコノメソウの結実時期にまじめに食害の有無を数えるくらいはしておけばよかったかなと思います。
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