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ESJ64二日目 [学会]

朝一番に大会本部で今日のスケジュールを再確認。余裕があるのは午前中だけなので、ざっとポスター会場を見てまわり、種子散布の企画集会T03「森林の哺乳類・鳥類による種子散布システム~最新の定番ツールでどこまで読み解けるか~」に参加。シンポジウムも並列開催された時間帯だったけど、会場はかなり埋まっていた。

企画者の正木さんから企画趣旨の紹介後、最初は永光さんが花粉と種子の移動についてSNP、SSR、microsatelliteなどの遺伝標識やParentage analysis、Gene pool analysis、SGS analysisなどの解析手法について紹介。私は自分で遺伝解析する予定は今のところないけど、論文の査読が回ってくることもあるので、基本的な知識を復習することができてよかった。ただ、英語スライドだったので、うちの学生たちはほとんど理解できなかった様子。

小池さんはタヌキやクマの種子散布の研究について動物側の視点から紹介。体内滞留時間には個体差や性差がある場合もあるけど、結局は動物側の行動パターンに大きく依存して種子散布先が決まる。大量の追跡データがあれば、体内滞留時間のデータは近縁種のデータで代替したとしてもまあまあシードシャドウの推定はいけるのかもしれない。

直江さんは最近の酸素安定同位体を利用して標高方向の種子散布を解明した研究の紹介。広い範囲の標高帯に分布する植物なら、お金を気にしなければ使えそうな手法だけど、ミズキの検量線がイマイチだったのはサンプル数の問題だろうか?それとも結実に明確な年変動がある樹種ではうまくいかないのだろうか?テンが意外と垂直移動しているのだけど、これまでに知られている行動圏サイズから矛盾しないくらいの距離なのだろうか?あと、正木さんからのコメントにもあったけど、垂直移動した先での種子の運命を追跡したいところ。同じ糞から出現した種子が同じ標高帯の種子であれば、一部をサンプリングして、残りを追跡することはできるのではないかな。

最後は吉川さんが森林景観レベルでの種子散布について、最近Biological Conservationに掲載されたばかりの小川で鳥の動態と果実の動態を調べた研究を紹介。謝辞に書いてあるけど、査読者6人に対応するのは大変だったのではないかな。果実資源量の定量化に使っている手法を角間でも使ってみるかな。一度、学生と一緒に練習してみるか。あと最後にちらっと体サイズと体内滞留時間のレビューデータも紹介。しっかりナメクジの体内滞留時間も掲載されていた。

最後にコメントするのを忘れてしまったのだけど、動物による種子散布の研究は非常に沢山の要因が絡んできて、結果もクリアーにはでないことも多いけど、うまい切り口でアプローチできれば、大学院での研究テーマとして十分成り立つと思います。吉川さんや直江さんより下の世代の研究者の参入をうまく取り込んでいけるとよいのだけど。どの発表も自分の研究を紹介するだけではなく、最新の研究成果も紹介していたので、必死にメモを取っていた参加者が結構いた。わたしももうちょっと論文メモ書きの更新頻度を高めたい。

その後はポスター会場で種子散布絡みのポスターと集中講義でお邪魔した大阪市大の学生のポスターをざっと見る。まだシンポジウムが行われている時間で発表者が少なかったのは残念。ただ、今年は種子散布絡みの発表はあまり多くはなかった様子。動物と植物の相互作用分野では、送粉分野のポスターに面白そうなものが多かった。

お昼はEcological Research、Journal of Plant Research、Journal of Ethology、Population Ecology、Plant Species Biologyの編集関連の方々の情報交換会にオブザーバーとして参加。どの雑誌からも査読依頼来るんだよな~。小さい学会だと雑誌を維持するのがけっこう大変らしい。熱帯生態学会ともかなり高齢化が進んでいるので、ちょっと気にしておこう。その後は今大会のメインである執行部の業務内容の引き継ぎ打ち合わせ。うう、貰った情報が多すぎて処理しきれていない。

今日は夜の自由集会には参加せず、総会資料の準備作業のお手伝い。来年は自分たちがやるんだものなあ。8時に終了したけど、飲み会には参加せず、ホテルで早めに休む。